二級建築士 平成25年度 学科 I (建築計画)解答解説①
平成25年度 学科 I (建築計画) ー1/5
[ No.1 ]
建築物とその設計者との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
1.日本銀行本店(1896年) ージョサイア・コンドル
2.旧赤坂離宮(迎賓館)(1909年) ー 片山東熊
3.旧帝国ホテル(1922年) ー フランク・ロイド・ライト
4.神奈川県立近代美術館(1951年) ー 坂倉準三
5.国立西洋美術館本館(1959年) ー ル・コルビュジエ
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
日本銀行本店は、辰野金吾の設計により建設された。平面形状は「円」の形状を示し、ネオ・バロック様式といわれる。総石造りとする予定であったが、地震の多い日本の風土を考慮して、積み上げたレンガの上に石を外装材として用いる工法に変更し、建物の軽量化を図った。
2.◯
旧赤坂離宮は、片山東熊の設計により当初は東宮御所として建設された。住居としての使い勝手がよくなかったため、御所として使用されることはほとんどなかった。後に離宮として使われるようになり、赤坂離宮と名称が改められた。
3.◯
旧帝国ホテルは、フランク・ロイド・ライトの設計により建設された。小規模な部分が繋ぎ合わされた連結構造になっており、耐震・防火に優れ、関東大震災でもほとんど損傷しなかった。玄関部分は明治村(愛知県犬山市)に移築・保存されている。
4.◯
神奈川県立近代美術館は、坂倉準三の設計により、鶴岡八幡宮境内に開館した日本最初の近代美術館である。平家家に迫り出すように建つ軽快な姿は、日本のモダニズム建築を代表する建築とされている。
5.◯
国立西洋美術館本館は、ル・コルビュジェの設計により建設された。耐震改修に際しては、オリジナルデザインを継承するため、基礎部分に免震装置を取り付ける工法(国内初の免震レトロフィット:清水建設)により工事が行われた。
[ No.2 ]
歴史的な建築物とその様式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.パルテノン神殿(アテネ)は、ドリス式のオーダーによる周柱式とイオニア式のオーダーを用いたギリシア建築である。
2.コロッセウム(ローマ)は、ローマ市内に残る古代最大の円形闘技場であり、ドリス式、イオニア式及びコリント式のオーダーを用いたローマ建築である。
3.サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)は、巨大なドームや列柱廊を用いたビザンチン建築である。
4.ピサ大聖堂(ピサ)は、ラテン十字形のプランをもち、交差部に楕円形のドームを架けたロマネスク建築である。
5.ノートルダム大聖堂(パリ)は、側廊の控壁をつなぐフライングバットレスや双塔形式の正面を特徴とした初期ゴシック建築である。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
パルテノン神殿は、ギリシアの半島部で流行したドリス式オーダーと、島嶼部や小アジア地域で流行したイオニア式オーダーの両方が用いられている。2つのオーダーを用いることにより、全ギリシアを代表する神殿であることと示そうとしたと考えられている。
2.◯
コロッセウムは、ローマ帝国最大規模の円形闘技場である。4層のアーチが積層した外観を有し、下から順にドリス式、イオニア式、コリント式、複合式のオーダーが用いられている。
3.×
サン・ピエトロ大聖堂は、カトリック教会の総本山で、二重殻の巨大ドームをもつ世界最大規模のバロック様式の教会建築である。4大バシリカ(古代ローマ様式の大聖堂)の一つに数えられる。
4.◯
ピサ大聖堂は、ヨーロッパ最大級のロマネスク様式の教会堂である。ラテン十字の平面プランを有し、ビザンチンのモザイク、イスラムの尖塔アーチ、ロンバルディア地方の小アーケード、古代ローマの列柱など、各種の建築要素が統一されている。
5.◯
ノートルダム大聖堂は、13世紀に完成した、初期ゴシック様式の建築物である。高さ69mの双塔の鐘楼を持ち、バラ窓やフライングバッドレスで有名である。2019年4月の火災により、身廊・翼廊の屋根と尖塔が焼失した。
[ No.3 ]
建築環境工学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.日照率は、可照時間に対する日照時間の割合である。
2.大気放射は、日射のうち、大気により吸収、散乱される部分を除き、地表面に直接到達する日射のことである。
3.NC値は、室内騒音を評価する指標の一つである。
4.対流熱伝達は、壁面などの固体表面とそれに接している空気との間に生じる熱移動現象のことである。
5.クロ(clo)値は、衣服の断熱性を表す指標であり、人の温冷感に影響する要素の一つである。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
日照率は、ある日の日の出から日没までの可照時間に対する日照時間の割合である。
2.×
大気放射は、大気が放出する熱放射をいう。地表面が射出する熱放射を地面放射といい、大気放射と地面放射をあわせて地球放射という。設問は、直達日射の説明である。
3.◯
NC値は、室の静かさを表し、室内騒音を評価する指標の一つである。NC-30のように表し、数値が大きいほど許容される騒音レベルは高くなる。(NC:Noise Criteria )
4.◯
熱伝達は、流体と物体間の熱移動をいう。対流熱伝達は、壁体表面とそれに接している空気との境界面に生じる対流による熱移動現象をいう。
5.◯
クロ値は、人の温熱に関する快適感に影響する衣服の熱遮断性能を表す指標である。着衣料の単位として用いられ、標準的なサイズの冬用スーツ1着が約1クロである。
[ No.4 ]
換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.居室の必要換気量は、一般に、室内の二酸化炭素濃度を基準にして算出する。
2.温度差換気において、外気温度が室内温度よりも高い場合、中性帯よりも下方から外気が流入する。
3.室容積 80m3の居室の換気量が 240m2/hの場合、この居室の換気回数は3回/hである。
4.第2種換気設備は、室内を正圧に保持できるので、室内への汚染空気の流入を防ぐことができる。
5.便所や浴室において、その周囲へ汚染空気が流出しないよう排気機を用いた換気とする。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
室内の空気汚染は、室内の人の呼吸や体臭、喫煙などで進行する。居室の必要換気量は、一般に、室内の二酸化炭素濃度を基準に算出される。二酸化炭素の許容濃度は 0.1%(1,000ppm)である。
2.×
中性帯とは、室内の空気圧が室外の大気圧と等しくなる垂直方法の位置のことをいう。外気温度が室内温度よりも高いときは、室内側圧力は中性帯の上方が負、下側が正になる。このため、温度差換気においては、中性帯より上側の開口から外気が流入し、下側の開口から室内空気が流出する。
3.◯
換気回数は、その室の1時間当たりの換気量を室の容積で除した値である。設問も場合、換気量 240m3/hを室容積 80m3で除した値の 3回/hが換気回数となる。
4.◯
第2種換気法は、給気機によって外気を室内に供給し、自然排気口から排出する換気方式である。室内は正圧となり汚染空気の流入を防ぐので、病院の手術室や研究所の無菌室などの清浄室の換気に適している。
5.◯
便所や浴室などの汚染室では、室内の空気が外へ流出しないように室内の空気圧を周囲の空間より低く保つため、自然給気と機械排気による第3種換気を行う。
[ No.5 ]
冬期の住宅における外気に面した窓ガラスの室内側の表面結露防止対策に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ガラスを断熱性能の高いものに交換する。
2.窓面のカーテンを閉める。
3.放熱器を窓の下に設置する。
4.換気を行う。
5.雨戸を閉める。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
ガラスの断熱性能を高めると、低温な外気による窓ガラスの室内側の温度低下が低減されるため、表面結露防止に有効である。
2.×
窓面のカーテンを閉めると、カーテンと窓の間が暖房されにくくなり温度が室温より低くなるため、露点温度に達しやすく、結露が発生しやすくなる。
3.◯
放熱器を窓下に設置すると、暖気が窓面に沿って上昇するため、ガラスの室内側の表面結露防止に有効である。
4.◯
換気を行うと、水蒸気の少ない外気が導入されることにより室内の絶対湿度が低下するので、ガラスの室内側の表面結露防止に有効である。
5.◯
雨戸を閉めると、雨戸が断熱材の役割を果たし、低温な外気の影響を低減することができるため、ガラスの室内側の表面結露防止に有効である。