二級建築士 平成25年度 学科 I (建築計画)解答解説④
平成25年度 学科 I (建築計画) ー4/5
[ No.16 ]
建築物の各部の寸法及び床面積に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.一般の病室において、4床室の内法寸法を、幅6m、奥行 5.4mとした。
2.保育所において、4歳児を対象とした定員 20人の保育室の床面積を 44m2とした。
3.特別養護老人ホームにおいて、定員4人の入居者専用居室の床面積を 48m2とした。
4.車椅子使用者の利用する高低差1mの屋外傾斜路において、勾配を 1/15とし、その中間に踏幅2mの踊場を設けた。
5.自走式の地下駐車場にある高低差4mの自動車専用傾斜路において、傾斜路の始まりから終わりまでの水平距離を 20mとした。
答え
5
[ 解答解説 ]
1.◯
2人室以上の一般病室は、1人当たり 4.3m2以上必要であり、設問の病室は 32.4m2あり、かなり余裕のある面積である。
2.◯
厚生労働省の児童福祉施設最低基準に、保育所の保育室の面積は、幼児1人当たり 1.98m2以上と定められており、定員20人の保育室を 44m2とすることは適当である。
3.◯
厚生省令(当時)で、特別養護老人ホームの居室の入居者1人当たりの床面積は、10.65m2以上とされており、定員4人の入居者専用居室の床面積を 48m2とすることは適当である。
4.◯
建築物移動等円滑化誘導基準に、敷地内に設ける傾斜路は、勾配は 1/15を超えないこと、高さが75cmを超えるものにあっては、高さが 74cm以内ごとに踏幅が 150cm以上の踊り場を設けることと定められている。
5.×
屋内駐車場の自動車用車路の勾配は、駐車場法で 17%(≒ 1/6)を超えないことと定められている。設問の傾斜路は 1/5の勾配となり不適当である。
[ No.17 ]
窓又は扉等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.一戸建住宅の車庫において、防犯と採光のため、グリルシャッターを設けた。
2.小学校において、出入口をガラス張りにするに当たって、安全性を考慮して、強化ガラスを用いた。
3.集合住宅において、共用廊下の通行の妨げとならないように、各住戸の玄関前にアルコーブを設けて、玄関扉を外開きとした。
4.一戸建住宅において、一方を片引き、他方をはめ殺しとした外窓の場合、雨仕舞を考慮して、片引き部分を屋内側に設けた。
5.飲食店において、客用の出入口を、タッチスイッチ式の自動ドアとした。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
グリルシャッターは、シャッター面が格子状(グリル)の形態をしている。シャッターを閉めても内部が見通せるため、採光や照明による視認性が高まり、防犯や意匠等を考慮する場合に適している。
2.◯
強化ガラスは、板ガラスを再加熱した後に、冷却空気を吹き付けて急冷してガラスの表面に圧縮応力を加えたガラスである。通常のガラスに比べて 3~5倍の強度があり、破損した場合には全体が小さい粒状になる。
3.◯
集合住宅の住戸において、共用廊下に面する玄関前にアルコーブを設けると、玄関ドアを外開きにしてドアを開けても、共用廊下の通行の妨げにならなくなるため、適当である。
4.×
一方を片引き、他方をはめ殺しとした外窓は、強風雨時に雨水が室内に浸入することが少なくするため、片引き部分を屋外側、はめ殺し部分を屋内側に設ける。
5.◯
飲食店のように、ひやかし客が少なく清潔さが求められる店舗の客用出入り口を、人を検知するだけで開閉する自動ドアではなくタッチスイッチ式とすることは、出入り口の無用な開閉を防止するため適当である。
[ No.18 ]
高齢者や身体障がい者等に配慮した建築物の各部寸法等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.廊下の手摺は、直径を 35mmとし、手摺と壁面とのあき寸法を 40mmとした。
2.階段の手摺の端部は、上下階で水平に 300mm延ばし、壁面側に曲げた。
3.洋式便所の手摺の直径は、横型手摺に比べて、縦型手摺を細くした。
4.エレベーターかご内の車椅子使用者用操作盤の位置は、床面から操作盤中心までの高さを 1,300mmとした。
5.車椅子使用者に配慮し、記帳などを行う受付カウンターの上端の高さを、床面から720mmとした。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
階段や廊下等の手摺は、外径が 30〜40mm程度の円形または楕円形のものが握りやすい。壁とのあき寸法は、狭い方が通路部分の有効幅員を多くできるが、手の差し込み安さも考慮する必要がある。40mmは適当な寸法である。
2.◯
階段の手摺の端部は、上下端共に1段分程度(約300mm)の余長をとり、袖等が引っかからないように、下方や壁側に曲げるなどの処理を行うことが望ましい。
3.◯
洋式便所の縦型手摺は、立ち座りの際の体重の上下移動を支えるため、しっかり握れるよう、手で押し下げて使用される横型手摺より若干細い径とすることが望ましい。BLの認定基準では、歩行補助手摺は直径 30〜40mmの円形、動作補助手摺は直径 28〜35mmの円形とされている。
4.×
車いす使用者が利用するエレベーターの押しボタンは、床面から1,000mm程度の高さが適当である。1,300mmでは高すぎる。
5.◯
車いす使用者が利用する受付カウンターの高さは 700mm程度として、カウンターの下部に高さ 600mm、奥行に450mm程度のクリアランスを設ければ、車いすがカウンター下部に入ることができ、記帳が容易となる。
[ No.19 ]
建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.室指数は、照明率を求める際に用いられる指数であり、室の間口・奥行、作業面から光源までの距離によって求められる。
2.バキュームブレーカは、吐水した水又は使用した水が、逆サイホン作用により給水管に逆流することを防止するために設けられる。
3.成績係数は、熱源機器のエネルギー効率を表す数値であり、その数値が小さいほど効率がよい。
4.アスペクト比は、長方形ダクトの断面の長辺と短辺の比であり、4以下とすることが望ましい。
5.大便器の洗浄方式におけるフラッシュバルブ方式は、連続して使用できるので、多人数が使用する公共建築物などに適している。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
室指数は、室の形による指数で、照明率を求めるために用いられる。
室指数 =( X × Y )/( H × ( X + Y ))
X:室の間口、Y:室の奥行き
H:作業面から光源までの高さ
で求められる。
2.◯
バキュームブレーカは、使用済みの汚水などが逆サイホン作用により逆流することを防止する器具である。サイホンを起こす真空部分hw自動的に空気を送り込む構造となっている。
3.×
成績係数は、空気調和設備の熱源機器のエネルギー効率を表す指標である。冷暖房容量を空気調和に要した圧縮仕事の熱当量で除した値であり、値が大きい熱源機器は効率が良い。
4.◯
アスペクト比は、物の長辺と短辺の比率を示す用語である。空気調和設備では、角型ダクト断面の長辺と短辺の比を示す。4以下であることが望ましい。
5.◯
大便器の洗浄方式には、ロータンク方式、ハイタンク方式、フラッシュバルブ方式などがある。不特定多数の人が連続して使用する建築物には、連続使用が可能なフラッシュバルブ方式が適している。
[ No.20 ]
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.定風量単一ダクト方式は、熱負荷特性の異なる部屋におけるそれぞれの負荷変動に対応することができない。
2.ファンコイルユニットと定風量単一ダクトとを併用した方式は、定風量単一ダクト方式に比べて、必要とするダクトスペースを小さくすることができる。
3.空気熱源ヒートポンプ方式のルームエアコンの暖房能力は、一般に、外気の温度が低くなるほど低下する。
4.変風量単一ダクト方式は、低負荷時においては、必要換気量の確保と、空気清浄度の維持が困難な場合がある。
5.冷却塔の冷却効果は、主として、「冷却水に接触する空気の温度」と「冷却水の温度」との差によって得られる。
答え
5
[ 解答解説 ]
1.◯
定風量単一ダクト方式は一定の風量で送風し、送風空気の温度変化により冷暖房負荷に対応する。負荷特性の異なる部屋やゾーンに対しては、負荷変動に容易に対応できない。
2.◯
ファンコイルユニットと定風量単一ダクトを併用したダクト併用ファンコイルユニット方式は、換気のための外気を温湿度調節して室内に送風するだけで、還気をしない方式である。定風量単一ダクト方式に比べて、ダクトスペースや搬送動力を小さくすることができる。
3.◯
空気熱源ヒートポンプ方式のルームエアコンハ、外気の熱を熱源に利用して暖房を行う。このため、外気の温度が低くなり、暖房負荷が大きくなるほど暖房能力が低下する。
4.◯
変風量単一ダクト方式は、送風量を調節することにより冷暖房負荷に対応する。定風量単一ダクト方式に比べ、エネルギー消費量を低減することができるが、低負荷時においては、必要換気量の確保や空気清浄度を一様に維持することが難しい場合がある。
5.×
冷却塔は、冷却水が冷媒から奪った熱を、主として水の蒸発潜熱(気化熱)により大気中に放散させる装置である。冷却水に接する空気の温度と、冷却水の温度との差により得られる効果は少ない。